20
Side セリ
―――夜が明ける寸前、俺は携帯の着信音で目が覚めた。
「ん……、っ」
目が腫れぼったくて、顔をあげることすら億劫だったけど、携帯画面に表示された名前に俺は飛び起きた。
「ナオ君―――」
まだ夜は明けず、ディスプレイの時計を見れば4時過ぎだった。
ずっと起きていたのかな、と思いながらメールを開いて、俺はベッドから降りてバタバタと外へ出た。
―――『セリさん、助けて』
たった一行、絵文字もないメール。
どんな気持ちでナオ君がメールを打ったのか分からない。俺は走って、なんと言葉をかけるつもりなのだろう。
でも、ナオ君を1人にしたくない。
ずっと、あこがれていた友達という存在。たわいもない話で笑ったり、一緒にご飯を食べたり。
当たり前のようなことさえ、ナオ君といるととても楽しかったんだ。
ナオ君が悲しんでいると、俺も悲しい。
傍にいて、ずっと話を聞いて。
いつだって、ナオ君の一番の味方でいたいんだ。
「―――ナオ君っ!」
俺は、ナオ君の家に着くと乱暴にドアをたたいた。早朝に近所迷惑だと思うが、そんなことはかまってられない。
「ナオ君、開けて。―――俺、何もできないかもしれないけど、辛い時は傍にいたいんだっ」
だから、心の扉を開けて。
祈るような気持ちでドアに顔を押しあてていると、かちりと鍵が開いた音がした。俺は逃げ込むように部屋に入ると、布団にくるまっているナオ君を抱きしめる。
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