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Side  セリ



―――昔から『僕』を包んでくれていた、優しい体温。

それに包まれながら、言われた言葉に目を見開いた。

「謝るって………」
「ナオに恋するあまり、あなたにとても酷い態度をとってしまいました。―――たくさん傷つけて、ごめんなさい」
「―――――っ」
「俺は、先輩が卒業してからずっと、先輩に会いたかった。―――どうして、連絡先も教えてくれずに、いなくなったりしたんですか?」

身体を解放され、慶太は慈悲を請うように俺の手をとって顔の前に持ってくる。その手に縋るように頬を寄せられると、抑えていた気持ちが溢れだした。

「―――慶太は、ずるい…っ」

寂しかったのに。悲しかったのに。

卒業式のあの日だって。

たくさんたくさん、悲しくて傷ついたのに。

―――たった一言甘い言葉を言われるだけで、俺は泣きだしそうになってしまうんだ。

「俺のことが嫌いなくせに…っ!卒業式の日に……っ」
「え……」
「慶太の言葉なんて信じられないよ!今だってナオ君と一緒に帰ってたはずだろう?」
「―――――」

その一言に、慶太が固まった。俺は彼の手を振り払うと、冷静に返そうと震える手を握りしめて慶太を見た。

「……俺はもう、『僕』じゃない。もう、ナオ君を置いてきてまで様子を見に来てもらわなければいけないほど弱くないし、慶太に頼ったりしないから、ナオ君のところに戻りなよ」
「せんぱい……」
「慶太の話、今は信じられない。…慶太は、今日のことで俺が飛鳥先輩だと気づいて頭に血がのぼってるだけだ。冷静になってもまだ話したいなら、今度聞くから」

俺はそういうと、慶太に背を向けて再び歩き始めた。これ以上話していると、声が寒さでなく震えてしまいそうだった。


「―――っ、ちくしょ…っ!先輩、こっち向いてくれよ!」
「嫌だ!」
「ムシがいいけど、昔みたいにまた話したりしたいんだ!―――あの時のこと、思い出してくれよ!」
「俺は忘れたことなんてないっ!」





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