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「―――今日は楽しかったね」
「ああ、そうだな」
二人で歩いて帰っていると、ナオが楽しそうに笑いかけてくる。俺がそれに頷くと、ナオは嬉しそうに笑った。
「今日のカフェも、またセリさんと行かなきゃ。今度はチョコレートフェアじゃないときに」
「……そ、れは楽しみだな」
セリさんの名前が出て、ドキッとした。
今日セリさんについて知ったこと。同じ高校出身で、一つ上で、チョコレートアレルギー。
そんな人、俺の知り合いでは1人しかいない。
だけど、容姿が全く違うから、まさかとは思いつつもいいだせないでいた。
まさか―――整形したとか…
あれだけ酷いいじめを受けていたのなら、あり得るかもしれない。そう思う一方で、『あんなに強い飛鳥先輩が負けるはずがない』と思う自分もいた。
「ねえ、本当にセリさんの高校時代知らないの?」
「知らねえって。セリなんて先輩聞いたことないし」
ナオが、ふと思い出したように聞いてくる。
それに内心どきりとしながらも、そっけなく答えた。
そして―――ナオが爆弾を落とした。
「え?セリさんアレ本名じゃないよ?本当は―――芹沢飛鳥、っていうんだって」
「――――――っ」
言葉が、出なかった。
まさかだった。まさか、先輩が整形しているなんて。
「二人の時は呼んでいいって言われたから呼んでるけど―――って!慶太っ!!」
今まで自分がしてきたことがフラッシュバックして、俺は無我夢中できた道を走った。
俺は、あの人に何をしていた?
あの人から飛鳥先輩の面影を感じるのが怖くて。無意識に惹かれていく自分に困惑して。
ずっと、酷いことをしてしまっていた。
でも、当然だったのだ。
面影を感じるのも、惹かれてしまうのも。
本当に、飛鳥先輩だったのだから――――
「――――飛鳥先輩っ!!」
俺は飛鳥先輩を見つけると、夢中で抱きしめた。
「……飛鳥先輩、飛鳥先輩……っ」
腕の中に、飛鳥先輩がいる。
一度途切れてしまった絆が、もう一度つながりかけている。俺は絆が切れてしまうのを恐れて、離さないとばかりに飛鳥先輩を抱きしめた。
「どうして…慶太」
飛鳥先輩は、困惑したようにそうつぶやく。俺は先輩を少しだけ離して顔を覗き込むと、恋い焦がれた存在にくらくらしながら口を開いた。
「今までのこと……謝らせてください」
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