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心配、してくれたのかな…
心配をかけて申し訳ないけど、胸の奥がぽっと暖かくなる。最近の俺は、柊君に元気をもらってばかりだ。
「セリさん、デザート何か食べます?」
「え?」
そんなことを考えていると、ナオ君が俺に向かってそう言ってきた。ふっとメニューを見ればたくさんのデザートが並んでいた。
「食べたいけど……うーん、今日はやめとこうかな」
メニューに並んでいたデザートには写真が無く、メニューの名前だけではどんなものか想像できないデザートばかりだ。
使われているフルーツなどは品名に書いているので分かるのだが、『チョコレートフェア開催中』の文字が気になってしょうがない。
ナオ君も俺のそんな戸惑いを感じたのだろう。
『はい、じゃあ俺だけ頼みますね』と笑顔で頷くと、慶太にからかわれていた。
「いつも甘いの食ってるじゃねえかよ」
「いいじゃないですか、好きなんだから」
そんな会話をしていると、店員さんが注文を聞きに来てくれて、そのまましばらく話すことになった。
最初の方は映画の話題だったのだが、『知り合いに近い友人』程度の仲なので、お互いのことについてが話題の中心になってくる。
「慶太とヒイラギさんは、同じ高校出身なんですよね?」
「あぁ、そうだな」
「その時からお知り合いだったんですか?」
「知り合いではなかったかな。慶太人嫌いだったし」
「先輩だって人のこと言えないじゃないですか」
「俺はちゃんとクラスメイトと仲良かったじゃねえか」
「何であんな笑顔に騙されるのか不思議でたまりませんでした」
「いうじゃねえか」
三人が話しているのを聞きながら、俺はみんなが打ち解けていくのを見て嬉しくなっていた。大切な人がたくさんいて、こんなふうに一緒にいることができて幸せだと思う。
「そう言えば、セリも同じ高校だよな?」
「「えっ!」」
「えっと……」
ナオ君と慶太の声が重なって、俺はドキッとする。『ブスカ』だった俺を二人が分かるわけはないのだが、変に緊張してしまう。
事実だし、否定することもないと思って、俺は戸惑いながらも頷いた。
「うん、そうだよ」
「全然知らなかった…慶太も?」
「少なくとも俺が居た時にはこんな先輩はいなかったと思います」
「俺とセリは同い年だよ。かなり有名だったけどな?オマエ人嫌い過ぎて噂に疎いんじゃね?」
柊君が横からそういうと、慶太はちょっとムッとした顔になった。
確かに、柊君は嘘を言っていない。
俺は不細工過ぎて有名だったし、慶太がちょっと噂に疎いところがあったのも本当だ。慶太も自分が噂に疎いと知っていたから、むっとしながらも何も言わないのだろう。
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