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「あの、これ、差し入れです」
「ありがとうございます」

その後、予告通り撮影が終わってから彼はやってきた。

少しオドオドした感じでカップコーヒーを渡され、俺は小さく笑う。

「あ、あと、お疲れ様です」
「ふふ、それ順番が逆じゃないですか?」
「あっ」

かーっ、という効果音が付きそうな勢いで赤くなった彼に、俺はおかしくって笑ってしまった。

「す、すみません…」
「謝るなんてとんでもないですよ!こちらこそ笑ってしまって……失礼ですが、お名前伺ってもよろしいですか?」
「あっ……た、高瀬です。高瀬直(たかせなお)と言います」
「高瀬さんね……よろしく」
「はい。同い年なので、名前でよんで下さい」
「じゃーナオくんね」

彼――ナオくんは俺が名前を呼ぶと、とても嬉しそうにはにかんだ。

「ナオくんは、カメラさん?」
「はい。付き人として器材とか運ばせて貰ってます」
「あぁ、それで」

昨日のことを思い浮かべ、俺は納得した。

器材に隠れて全く姿が見えなかったため、まるで器材が勝手に歩いているように見えたのが印象的だった。

そんな俺にたいして、ナオくんは急に落ち込んでしまう。

長い前髪の下でも明らかなその姿に、俺は首を傾げた。

「―――ナオくん?」
「…俺、今日誘ったのは、謝りたかったからなんです」





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