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そのため息をどう受け取ったのかは分からないが、不安げな表情になった雪に小さくキスをして、方向を変えた。
「じゃ、風呂一緒に行くか。ゆっくりしようぜ」
「はい……っ」
とたんに嬉しそうな顔になった雪の背中を撫でながら、俺はそのまま浴室に向かう。
浴室には雪が用意していた湯がまだ残っていて、それに入浴剤を入れると雪をおろし、風呂に入る。
互いの体を洗いあい、向かい合う形で湯船につかると、すっかり目が冴えてしまった雪が口を開いた。
「あの、ヤナギさん」
「なんだ」
「身体、触らせてほしいです」
さっき散々洗うので触ったくせに、と思いつつも、俺は喉の奥で笑ってそれに答えた。
嬉々として手を伸ばして来た雪にされるがままになりながら、くすぐったいようなもどかしい感覚に耐える。
雪は、俺の刺青が好きなようだ。一般人が見たら驚くものでしかないのに、雪は刺青をなぞるように何度も何度も指で身体をたどる。
「……今回も、けがは無しですね」
「当たり前だろ?俺が怪我なんかするかよ」
怪我のチェックは、俺が仕事から帰って来た時の恒例行事である。セックスの時にやたら身体を触りたがるからどういうことかと聞いたら、存外可愛い理由で驚いたものだ。
「じゃ、今度は俺の番な」
もちろんタダで触らせてやるほど俺は善良ではないので、そのまま雪の身体に手を這わせる。
何度もこのまま本番になだれ込んでしまったが、今日は本当に触るだけにしようと思った。
勉強をしながらでも傍にいることはできるし、発情した猿のようにヤらなくても今回は時間がたっぷりあるのだ。
じわじわと雪の身体を拓かせるのも一興かもしれない、そんな軽い気持ちで手を動かしていると、吸いつくような感覚が面白かった。
筋肉のない、ガリガリなのに柔らかい体。肋骨が浮く寸前だった胸には少し肉がついてきたようだ、と思うとますます触りたくなってくる。
白色の湯の水面で揺らめくカフェオレ色の突起を軽く撫でると、雪が切なく啼いた。
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