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瀧本の部屋で治療してもらい、痛み止めを飲んで俺は一息ついた。
頭の傷は深く無かったが、念のため明日検査をしてもらうらしい。
傷薬を片付けてもらい、改めて二人きりになったところで、俺は瀧本に後ろから抱きしめられた。
「……痛いか?」
「痛くない。…なぁ瀧本、お願いだ」
「『抱いてくれ』は却下だ」
恥を忍んで言おうとしたことを遮られ、俺は戸惑いに揺れる。
どうして、と思っていると、ベッドに向かい合うように座らされた。
「今日は傷が痛いだろ?痛い時には優しくしたいし、その方が安心するだろ?」
「けど……瀧本のものにしてほしい」
優しさから言ってくれているであろう瀧本の言葉の隅々に、滲む情欲。
我慢なんかしないで欲しい。俺は瀧本のものなのだと、貪るように抱いて欲しい。
そう重ねるように言えば、瀧本の目に明らかな欲が宿った。
俺は瀧本に畳み掛けるように、抱き着いてねだった。
「優しいのは好きだけど、今は不安なんだ。不安なんて消えるくらい、瀧本に抱き潰してもらいたい」
「―――ったく、煽ってんじゃねーよ」
「あっ」
瀧本はそう言ったかと思うと、俺をベッドに押し倒す。
上から見下ろされて、歓喜に小さく震えた。
「最後まではしねぇ。そのかわり、不安になる暇も無いようにネチネチ抱いてやる」
「ふっ、それを宣言するのか」
「当たり前だ――俺を煽ったこと、後悔させてやる」
可笑しくて小さく笑ったが、瀧本はケモノの顔になっていやらしく舌なめずりをする。
瀧本がそう言ったのを最後に、会話は無くなった。
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