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「……確かに、その通りだ」
俺は一つ頷くと、ゆっくり起き上がった。
彼女たちはそんな俺に小さく身構えたが、強気な姿勢を保っている。
「好きって言える素直さもないし、みんなみたいに可愛らしい見た目でもない。瀧本を思ってきた期間だって、誰より短い」
確かに、俺達がであったのは最近で、俺は彼女たちに勝てるものはほとんどない。
でも、一つだけある、
自信を持って言える、確かなもの―――
「――でも、俺は瀧本との未来を、誰より願ってる。俺を幸せに出来るのは瀧本だけで、瀧本を幸せに出来るのは俺だけでありたいと願ってる」
好きの二文字さえ、満足に言えない、不完全な俺。
でも、そんないびつを整えられるのは、瀧本がいいと思ってる。
瀧本であることを、誰より願って――もし叶うなら、きっと誰より幸せになれる。
そうありたいと、強く願うんだ―――
「…俺のことは、ムカついても、嫌いでもいい。だから――この気持ちだけは、どこかで知っていて欲しい」
言いながら、涙が溢れた。
瀧本を思う度、やっぱり愛しさがつのる。
瀧本と歩む未来は、きっといいことばかりじゃない。
俺は相変わらずネガティブだろうし、困らせてばかりだろう。
それでも、瀧本のふとした笑顔に、幸せを感じるのだ。
優しさに癒されていくのだ。
俺を癒すのも傷つけるのも、瀧本だけだ。
天国に連れていくのも、羽をもいでたたき落とすのも。
それでいい。
誰にも譲らない、一人で生きていくと決めた心を、瀧本だけに見せたい。
俺の全部、瀧本のものにしてほしい。
「……瀧本が好きなんだ。本気で、誰よりも大事で、愛しいんだ」
そういった時、急に辺りが騒がしくなった。
何事かと身構えていると、ガラスが割れるような爆音と、不良達の悲鳴が聞こえて来る。
「―――牧村ァっ!」
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