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不意に、女の子の一人がそう言った。
俺とて鈍くないので、床にはいつくばったまま小さく頷く。
「じゃあここで誓って。瀧本は諦める。二度と話したりしないって」
彼女はそういうと、携帯を手にした。録音して証拠にするつもりなのだろう。
携帯を顔の近くに近づけられて、俺は小さく首を振った。
「……それは、できない」
パシッ
そう言った瞬間、女の子に張り手を喰らった。
不良達に比べたら可愛い刺激だったが、頭がくらくらする。
だけど、それに負けずに、俺は口を開いた。
「俺が誓ったところで、瀧本は君たちを見ない」
そう言った瞬間、女の子達は傷ついたような顔をした。
女の子は鋭い。『女の勘』っていうのは馬鹿にできないし、すごいことだとおもう。
それなのに、気づいていないハズはないのだ。
瀧本は戻って来ない。自分たちは失恋したのだと。
だけど、割り切れないのも事実で。
持て余した思いの暴走を止めるには、時が癒すしかないのだ。
それを当事者である俺が言うのは、間違っているかもしれない。
お前は今好かれているからそう言えるのだ、と怒る人もいるだろう。
案の定、彼女たちは顔を真っ赤にして怒りはじめた。
「何よ!分かったような顔してっ!」
「せっかく忠告してやったのにっ!」
「私たちの方がずっと、ずっと瀧本を見てきたんだからっ!」
「ぽっと出のホモなんかに、何が分かるのよ!」
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