この手で掴みたい
一人、また一人と、口々に言いながらクラスメイトは去っていく。
結局、誰もいなくなったオレンジ色の教室。
傾き始める夕焼けに焼かれた目から、涙が溢れた。
――俺、やっぱり自信ない…
たった一人のクラスメイトの心すら、動かすことが出来なかった。
その事実が、夢の中にいた俺を一気に現実に引き戻そうとする。
――こんな俺のことを、好きだと言ってくれたって。
ネガティブな考えに陥りそうになって、俺は自分で頬を叩いて気合いを入れた。
最近の俺は、へこたれやすくていけない。
以前の俺なら、だからどうした、ってもっと強がれてた。
みんながいなくったって、一人で出来てた。
「……俺が諦めて、どうする」
俺が信じられなくても、瀧本は信じられる。
自分に自信が無くなったら、瀧本が好きになってくれた自分を信じればいいんだ。
そうしたら、自信が持てる。
まだ、頑張れる―――
急に気合いが入って、俺はダメになったものの修繕に取り掛かった。
メニュー段幕は不可欠であるから、まずそれから取り掛かる。
裁縫では修繕不可能なところまで来ているため、新しい布地を貰いに行こう。
そう思って被服室から布を貰い帰って来ると、誰かが教室にいる気配がした。
「――なぁ、誰もいねぇじゃん」
「本当だ」
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