おんなじ気持ち
好きな人に、好きだと言われた。
たったそれだけのことなのに、夢の中にいるようにふわふわして、幸せに感じる。
それとおんなじだけ、夢から覚めた時の恐怖に怯えていた―――
――今日の授業は散々だった。
朝の出来事でクラスの雰囲気は最悪で、休み時間もどこかよそよそしい空気が漂っていた。
ピリピリした空気を放つクラスメイトに担任は何も言わず、我関せずの態度を貫く。それがさらに俺達をいらつかせた。
昨日までの和やかなムードから一転、一気に居づらくなった教室で、放課後の準備がはかどるわけが無い。
みんなすっかり意気消沈していて、新しいものを作る気力も無いのかさっさと帰り支度を始めていた。
――こんなの、嫌だ……
「――なぁ、帰るの待ってくれ」
俺は我慢出来なくて、ついにそう言ってしまった。
クラスメイトの冷めた視線に身体が震えるが、なんとかしたくて口を開く。
「……看板とか、作り直そう。全部は無理かもしれないけど、本番までもう少しあるじゃないか」
材料だって残ってる、と言うと、クラスメイトたちは困ったように辺りを見回す。
みんなの戸惑いが感じられたけど、俺は静かに応えを待った。
「――ごめん。今日は帰りたい」
しかし、返ってきたのはそんな返事だった。
申し訳なさそうに、でも、しっかりとした言葉に、他のクラスメイトも同調する。
「あんなに頑張ったのにさ、いきなりぶち壊されて…今日くらい凹ませてほしい」
「ぶっちゃけやる気起きねーし」
「っていうか、委員長必死なの分かるけどさ、明日また壊されてたら委員長が犯人になるんだからな」
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