嫌なことは続くもの
―――そんな気持ちで迎えた次の日。事件は起こった。
「…うわ、ひでぇ………」
――次の日。朝一番に来た俺が見たのは、悲惨な状態になった看板だった。
看板だけでない。手作りのカウンターも、メニューを書いた段幕も。
無惨に引き裂かれて、ボロボロの状態で教室に放置されていた。
かろうじて数点は無事なのが、唯一の救いである。
俺はその状態の教室に入ることも出来ず、結局他のクラスメイトが来るまでそのまま立ち尽くしていた。
クラスメイトたちはやはり同様の反応を示し、あからさまに落胆する人もいた。
「――とにかく、片付けないと」
いち早く立ち直った俺がそういうと、みんなノロノロとした動きで片付け始める。
中には涙を滲ませた奴もいて、どれだけみんなが必死だったかが伺えた。
「……いったい、誰がこんなことを」
ぽつりと、片付けていた一人が呟いた。やりきれない思いがあるらしく、呟かれた言葉は苦々しい。
「――分からない。俺が来たときはこうなっていたから…」
「っていうか、牧村くんなんじゃない?」
俺の名前が出て、俺は驚きに言葉を失った。
声の先を見れば、女の子が侮蔑混じりの声で言う。
「朝一番に来るのは牧村くんじゃん。昨日みんな帰った時はなんでも無かったんだから、普通に考えて怪しくない?」
「委員長がそんなことするわけないだろ」
「っていうか、そういうこと言うとお前も疑われるぞ」
「私、看板へし折れるような力ないし。っていうかその時点で男子じゃん。勝手な言い掛かりつけないで」
すかさずクラスメイトがフォローしてくれたが、その一言でみんな黙ってしまった。
みんなが疑心暗鬼の今、下手に話せば自分が犯人になってしまう。そんな危惧もあったんだろう。
ついに誰も何も言わなくなり、女の子が勝ち誇ったように『ほら、怪しい』と笑った。
「―――じゃあ、お前の目はフシ穴だな」
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