好きだから苦しい
「委員長、今日は早く帰りなよ。バイトは代われないかもだけど、こっちはたくさんいるからさ」
「でも………」
「でもじゃない!文化祭本番に倒れちゃうのが一番勿体ないんだから、今日はお休み!」
「…………わかった」
強く言われ、俺は大人しく折れることにした。
「俺達もできるんだからさ、信じてよ」
こう言われては、反論しようがない。
せめてもの譲歩で、材料の片付けだけはして帰ることになり、看板に使った木片を持って外へ向かう。
その時、
―――ガシャーンッ!
けたたましい音がして、目の前の特別教室の窓ガラスが割れた。
割れた中に、茶髪の不良の姿があって、俺はさっと血の気が引くのを感じた。
「怪我……っ」
ガラスまみれになった不良の身体からは血が流れていて、俺は木材を置いて彼に駆け寄る。
「大丈夫か!?」
ブレザーのポケットからハンカチを取り出すと、血を拭うように動かす。
目元の流血が激しい。深く切ってしまったのだろうか。
どうしてこんなことに、そう思いながら割れたガラスの先を見て、俺は絶句した。
―――瀧本。
瀧本が、いる。女の子と、キス、してる。
身体が硬直したように、動けなくなった。
「うぜーっ!余計なことすんじゃねぇよっ!」
「うあっ!!」
そんな俺を、不良は嫌そうに蹴飛ばし、そのままどこかに行ってしまう。
その騒ぎでこちらをみた瀧本と、目があった。
教室の中には、たくさんの不良が倒れている。
その中に佇む二人を見てられなくて、俺は木材を持って走った。
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