やってしまった
―――そこにいたクラスメイトの、誰もが息をのんだ。
俺の手には看板に使うために溶いていた絵具。その鮮やかな色が染みついた俺のシャツと、目の前の男のシャツ。
恐る恐る視線をあげて、相手の顔を確認する。
―――やってしまった。
そこにある金髪に縁取られた獰猛な顔に、俺はそれを悟ったのだった…。
―――俺のきらいなもの、浮気野郎とヤクザとヤンキー。
そんな俺の通う高校にも、文化祭の季節がやってきた。
暑さも少し弱まり、夕日がはえるようになってきた今日このころ。
少し市街から離れた、いわばちょっと田舎な俺の高校には、近さで進学を決めるヤツがたくさん集まっていて、他の高校に比べてちょっとガラが悪い。
自由な校風も相まって、スカートはみんな短かったし、ピアスも結構ざらだった。
そんな高校でも行事には熱くなるメンバーがそこそこいて、委員長の俺にいつになく協力してくれているので進行がすごく楽だった。
―――さっきまでは。
「……うわ、テメー何しやがる。派手にぶちまけやがって」
「…悪い」
手っ取り早く出店をすることになって看板を作ろうとしていた時、俺はコイツ―――瀧本(たきもと)とぶつかってしまった。
瀧本はいわゆる不良の典型、みたいなヤツで、金髪に染めた髪にたくさんのピアス、一向に教師に従わない姿勢にある方面からは大人気なやつだ。
女の子もとっかえひっかえしていて、こんな狭い田舎でそんなことをするから様々な浮名をほしいままにしている。
いい噂はあんまり聞かず、どっかの組の跡取り息子だとも言われている。
そんな奴に、絵具をぶっかけてしまったのだ。
その一部始終を見ていたクラスメイトの凍りついた視線が物語っている。
やってしまったと。
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