何だろうね
このままでいられるはずもなく、そしてそれを分かっている。でも、心地よすぎた。
心地よすぎて、俺は考えるのを放棄していたのだ―――
「―――ねえ、あんた牧村?」
―――ある日の放課後。今日は瀧本は用事があるらしくクラス活動には参加していない。
最近は良く参加してくれていたからクラスのメンバーも残念がっていたその日、彼女はやってきた。
文字通り、瀧本の彼女らしい。
何番目かは知らないが、とクラス活動中にやってきた行動力に感心しながら考えていると、人気のない所に案内された。
「ねぇ、最近瀧本の付き合いが悪いんだけど」
人に聞かれたくない話、といわれてそれしか思いつかなかったが、やはり瀧本がらみらしい。
「あんたにはさみしい思いさせてるけどさ、クラス活動もあるんだからしょうがないよ。文化祭は自由に行動できるようにしておくから、それまで我慢してくれ」
「そんなの今まで関係なかったじゃない。瀧本一人いないと満足に準備もできないわけ?」
「クラス活動はみんなでしないと意味がない。瀧本どころか、誰が欠けてもいけないよ」
そういうと、彼女は急に侮蔑交じりの顔になってこういった。
「いい子過ぎて気持ち悪い回答ね。そういうの大っきらい。…本当は、あなたが瀧本を放したくないんでしょ」
そういいながら、昼休みの特別教室、と彼女は呟いた。
それが何を意味するかなんて、よっぽど鈍くなければ分かる。
冷水を浴びせられたような気分になりながら、『何それ』としらばっくれようとした。
「知らないわけないでしょ。……男同士なんて、本当に気持ち悪い。あなたがどういったかは知らないけど、瀧本をたぶらかさないでくれる?」
「俺は瀧本をたぶらかしてなんかない」
「じゃあ―――あなた瀧本の何のつもり?」
そう言われて―――言葉が出なかった。
何番目かは知らないが、瀧本の彼女とクラスメイトの俺。どう考えても、邪魔なのは俺の方である。
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