不安定な安定感
「―――ん、んんっ」
「こら…っ、噛むなって」
じゃあ誰かきたらどうするんだ、そんな抗議は音もなく消えていく。
誰もいない昼休みの特別教室。リノリウムの床ではしたなく喘がされ、俺は声を抑えることしかできなかった。
あれから数日。毎日のように身体を拓かされ、今では後ろで快感を得ることも覚えた。過ぎた快感は俺にとって辛いものでしかなく、学校という場所が背徳感を煽り、燃えるような快楽に翻弄されるばかりだった。
そんな俺を楽しむように、捕食者のように瀧本は俺を苛む。わざと焦らすように腰を揺らしたり、前立腺を執拗に攻めてきたりした。
今はひたすら喘がせたい気分の時らしく、ひたすらに前立腺を責められていた。
ぐちゅぐちゅ、と粘質な音が響いて耳をふさいでしまいたくなる。俺の腕は瀧本にしっかりと握られ、動かすこともままならなかった。
涙と唾液でぬれてイヤイヤをする俺の耳に、予鈴のチャイムが聞こえてくる。瀧本はそれに派手な舌打ちをすると、急に律動を深く速くしてきた。
「あっ、ぁん!」
「牧村、まきむら…」
「やっ、だめだっ!そんなに強くしたら…っ!!ひぁっ」
パンパンとぶつかり合う音に、くらくらする。激しい律動にもう枯れたと思っていた涙がさらに溢れた。
さらに絶頂に導くように俺の中心を握られ、俺はあっさり果ててしまった。
「ん――――っ!!」
「くっ……」
果てた締め付けに、瀧本も絶頂を迎える。中に注がれた熱いものに、俺の後ろは搾り取るようにさらに収縮を繰り返していた。
「………牧村、」
「ん…」
行為が終わると、瀧本は抜いてしまう前に必ずキスをする。色を全く感じさせないそれはくすぐったく、優しい。
瀧本は俺への気持ちを分からないという。俺も瀧本のことをどう思っているかなんてわからない。
悪意しかもっていなかった相手に、確実に好意が向いているのが分かる。だけど、その好意をカテゴライズなんてできるはずもなかった。
とても濃い日々を送っていても、まだよく知りあってもいないのに、そういうのは時期尚早な気がする。
瀧本にもそれが言えるから、瀧本が気が済むまでは好きにさせている。
そんなあやふやな関係には不似合いな、優しいキスと甘やかな時間。
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