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口にしてから、私はハッとした。普段の自分からは信じられないくらい、汚い言葉が出た。

今まで一度もこんな言葉を使ったことが無い、驚愕に目を見開いていると、齋藤さんは満足そうに笑った。

「ははっ、きったねー言葉。…ようやっと、調子出てきたんじゃね」
「ち、ちが…っ、今のは…っ」

そう否定しても、頭の中には別の言葉でこだまする。
違う、違う違う―――うるせぇよ、面倒だな。

ハッとした時には、もう過去の自分と今の自分、どちらがどうなのか分からなくなっていた。綺麗な言葉は口汚く変換されるし、かと思えばそれを否定する自分もいる。

「真鍋―――オマエそんなお綺麗な人間じゃねえだろ?思い出せよ」
「―――だとしても、オマエにそんなこと言われる筋合いはねぇな」

齋藤さんに関しても、信じられないくらい汚い言葉が出る。嫌だ、やめてくれと叫ぶ私の声がどんどん小さくなっていき、気がつけば私の意識は泥沼に消えようとしていた。

「―――久しぶりだね、真鍋」
「きやすく話しかけんなクソが。―――随分とイイカッコじゃねえか、ド変態」
「おかげさまで」
「ハッ、見た目は変わっても中身は相変わらずクソ生意気だな。―――オラ、場所変われ」

泥沼の中、ずっと上の方から齋藤さんと、信じられないが私の会話が聞こえる。そして、二人が入れ替わるようにして身体の向きを変え、私が齋藤さんを押し倒していた。

「久しぶりだからな、めいっぱい犯してやんよ、クソ尋人」

私がそういったところで、私の耳には何も聞こえなくなってしまう。

―――そうして、薄れゆく意識の中、最後に私が見たのは、頬を赤らめて蕩けた表情を浮かべた、齋藤さんの表情だけだった。





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