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「……自分は、忘れて、幸せになりましたっ?んぅ、ふざけんなよ、テメェ俺をこんなにしといて」
「さいとうさ…んぁっ、」

腰の律動は止まらず、変な声が出てしまう。

恐怖が頭の中を渦巻き、とてもじゃないが思考が追い付かない。バラバラになった思考を寄せ集めていると、さらに齋藤さんは続けた。

「……本当に、覚えてないの?誰かに昔の自分を聞かなかった?」

少し寂しそうな響きのそれに、腰の動きも弱まる。私は問いかけに応えるように口を開いた。

「…だれも、教えてくれませんでしたよ!『知らない方がいい』と、みんな口をそろえて…っ、」

それで、昔のことは話題にされて。自分だけ阻害されるような気持ちを何度味わっただろう。

半ばやけくそで、普段の自分からは想像もつかないくらい強い口調になってしまったが、齋藤さんは満足そうに笑った。

「そうだよな、…あんな横暴なヤツ、誰も好きじゃなかったし。しょうがねえから教えてやるよ」
「え――――」
「―――アンタは、気に入らないやつは殴って、気が済むまで犯すような変態野郎だったよ。馬鹿みたいに強かったからみんな怖がって、でも一部には尊敬されて、地元では有名なヤンキーだった。――――そんで、俺を虐めてたんだ」

告げられた事実に、頭が殴られたようだった。だが、齋藤さんはさらに続ける。

「俺はどっから見てもキモイ見た目で、友達もいなかった。そんな俺を呼びだしては気まぐれに殴って、罵って、犯して―――おかげで、俺はケツにチンコはめられないとイケないし、罵られて悦ぶ真性のMになっちまった」

齋藤さんはそういうと、挑発するように笑い、自分の腰を撫であげた。腰を揺らす刺激と相まって、こんな状況でなければなんと淫猥な光景だろう。

「さいとうさ…っ、く」
「なぁ、オマエだけ幸せになるなよ。こんな体にした責任とれよ。―――俺のところまで落ちて来いよ」

齋藤さんはそういうと、腰を動かし始める。

どうしてこんなことになったのだろう。以前の私は、本当にそうだったのか?嘘をついてるんじゃないか?やめてくれ、やめてくれ――――

再開される律動に、まとまらない思考の中で口を開いた。

「勝手なこと言ってんじゃねえよ…尋人のくせに」





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