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灰音くんに触られる、その瞬間を想像し、僕はあっさり果ててしまった。内股を撫でただけで射精してしまった僕に、灰音くんは満足げに笑う。
「ははっ、思ったとおり。―――大人しいくせに、脱がせればすげえ淫乱」
「はっ、はぁ…」
「―――バカみてぇな格好だな、由佳」
灰音くんは僕を見ながらそういった。人前で恥ずかしげも無く股を開き、快感に蕩けている僕は本当に馬鹿だ。
「…それでも、君が興奮してくれるなら、嬉しい」
自分でも馬鹿だと分かっているのに、唇は弧を描き、僕を苛んだ灰音くんの右手に恭しくキスをした。
「…ねぇ、次は何をしたらいい?」
キスだけでは物足りなくて、その指を口に含み、舌で愛撫をする。灰音くんが驚いたように目を丸くしたのは一瞬で、すぐに誰にも見せたことのない、意地悪な笑みになる。
「―――上等だ。一生飼い殺してやるよ」
そう言うと、灰音くんは僕の左胸に噛みつき、僕の心臓の上に歯型を残した。
僕は痛みに一瞬顔をしかめたものの、僕のすべてを自分のものにしようとするかのような行為に、また笑みを深くしたのだった―――
本当は気持ちいいことが大好き。そのためなら、あなたの下僕にだってなってしまう。
―――どんなに自信が無いといったって。
これが、僕の隠しきれない本性。
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