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灰音くんは率直な疑問を口にしているだけなのに、僕はしどろもどろになってしまう。女子すらにも言い返せない、軟弱な奴だ、と呆れられるのが怖くて、僕はギュッと目を閉じる。

「でも―――それは外間が望んだことだろ?」
「え?」

だから、予想外の言葉が飛んできて僕は目を丸くする。

「言葉の通り、外間みたいに自分に自信が無い奴はさ、本当は頼られるのが嬉しいんだ。だから……断れない、じゃなくて断らない、だろ?」

灰音くんは、いつもグループの中心にいるような人だ。だから、優しい人だと勝手に思っていた。だけど、それは仲がいい人に対してのみらしく、大して仲良く無い僕に対しては随分辛辣だ。

僕は手にしていた箒を握りしめると、口を開く。

「そんなことないよ」
「じゃあ試してみる?」

灰音くんはそういうと、僕を無理矢理引き寄せる。手にしていた箒が軽い音を立てて倒れている間に、僕と灰音くんの距離はゼロになっていた。

「ん―――!?」

灰音くんと、僕がキスをしている。訳が分からなくて、僕は唇に重なる感触から逃れるように灰音くんの肩をぐっと押す。

「ン…、ふっ、ん…」

そんな僕の抵抗など意に介さないように、どんどん口づけが深くなっていく。酸欠で意識を失いそうになるほど強烈な口づけが続き、ようやく解放されると僕は床にへたり込んでしまった。

「…ほら、抵抗しないじゃん。本気で嫌ならキンタマ蹴ってでも拒否しろよ」

そんな僕を見降ろしながら、灰音くんはそんなことをいう。そうして、しゃがみこんで僕に視線を合わせると、意地悪く笑った。

「俺、オマエみたいなの飼ってみたかったんだよね」
「か、う…?」
「そう。―――由佳(よしか)は、俺の思い通りの人材だと思うんだけどなー」

急に下の名前で呼ばれ、僕はドキリとする。そんな僕の反応には興味を示さず、灰音くんは僕の服に手をかける。

「――――!な、何、」
「脱げよ、由佳」
「や、やだ」

僕は灰音くんから逃げるように手をばたつかせ、服を脱がされないように抵抗する。灰音くんはそんな抵抗などお見通しだったのか、すぐに僕の両手を捕まえて、行為を再開する。





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