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「……やだ、宮田君と、もっと一緒にいたい。僕、宮田君が大事だから、少しでも好きでいて欲しい…もっと、もっと仲良くなりたい……っ、部屋替えなんて、したくないよぉ……っ」
「唯……」
「お願い、これからも鏡の前占拠しちゃうし、プリンも食べちゃうけど一緒にいさせて!」

それでも、口からこぼれるのは本心の方だけで。

嘘でも言えなかった。宮田君が嫌いも、部屋替えしたいも。

だけど、そんなダメな僕を、宮田君は優しく抱きしめてくれて。

「―――当たり前じゃん、俺、唯のこと大好きなんだよ?」

―――あまつさえ、そんな幸せな言葉をかけてくれて。

「唯が可愛いから、部屋にいるときいつも理性総動員してた。風紀の仕事だって、唯に不釣り合いって言われないように頑張ってた。―――ちょっと抜けてるところも、遅くまで頑張ってるのに表には一切出さない強がりなところも、全部好きだよ」
「みやたくん……」
「だから、唯の気持ち聞けて嬉しかった。部屋替えしたいなんて、お願いだから言わないで」

どきどき、心臓がうるさい。

好きだって言ってくれた。僕のことを好きだって。

それだけで、こんなに心臓が破裂しそうになって、胸がいっぱいになって、幸せになれるんだ。

「……あのね、宮田君。もうひとつお願いしていい?」
「何?」

宮田君の返してくれる言葉が、ひどく甘い。宮田君も同じくらいしあわせなのかな、って思いながら、長年の思いを思い切って口にしてみた。

「―――僕と、友達になってくれませんか?」
「…………ん?」
「僕、普通の高校生がしているみたいな生活にあこがれてて……。この学園じゃ難しいかもしれないけど、この部屋だけでも、普通の高校生みたいに過ごしてみたいんだ」

ダメ?と宮田君を見ると、宮田君は固まっていた。僕を抱きしめたまま硬直していて、僕は『やっぱりダメだったのかな』と不安になってくる。

「……あー、そういうことかよ、ちくしょー」
「宮田君?」
「いや、いい、こっちの話」

かと思えば急に脱力してしまった宮田君を見て、僕は首をかしげる。だけど、宮田君は僕を見て『いいよ』と苦笑しながらも頷いてくれた。

「本当?」
「うん、今日から改めてよろしくな」
「うん!じゃあ今度、外に遊びに行こうね!」

嬉しくて、僕は泣いていたのも忘れて飛び上がって喜んだ。

やっぱり宮田君は優しい。

さっきまでのネガティブな気持ちが嘘のように飛んで行って、僕は本当に嬉しくってベッドにいたぬいぐるみに抱きついた。

「……大丈夫、友達から始めればいいさ」

だから、そう言って宮田君がこっそり自分を慰めていたことには気付けなかったのだった……





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