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「う……やっぱり、やだよ…っ」
宮田君に嫌われるのは、一番嫌だ。宮田君が好きだから、宮田君にも、ちょっとだけでいいから僕のこと好きでいて欲しい。
「―――帰ってるの?」
「っ」
そんな風に考えていると、宮田君が帰ってきた。僕がリビングにいないのを気にして、部屋を覗いてくれたらしい。
もうそんな時間になってしまったのか、と考えていると、宮田君が慌てたように部屋に入ってきた。
「ちょ、なんで荷造りしてるのさ!」
「っ」
突然宮田君に強く言われ、びっくりしてまた涙が溢れる。
「だって……、っこばんざめがぁぁぁっ」
「はぁ?」
びっくりして、何か口にしなきゃと思って口にした言葉は、何とも脈絡のないものだった。
「あー……強く言ってごめん、唯(ゆい)。唯の気持ち、ちゃんと聞くから。ゆっくりでいいから何でも言って」
それでも、宮田君は僕の目を見て辛抱強くそう言ってくれる。
その優しさも今日で最後なんだ、と思うとまた泣けてきて、僕は本当に泣き虫になってしまった。
涙で何度も詰まりながら、僕は思っていることをなんとか口にする。
「…宮田君が、部屋に帰りたがらない、って聞いて。僕がたくさん嫌な気持ちにさせちゃったんだ…って、思って」
「それで、部屋替えしようと思ったの?」
「うん……っ」
「それだけ?本当に唯は部屋替えしたいの?」
宮田君は何度も僕の涙をぬぐいながら、真剣な目をしてそう聞いてきた。
僕が頷けば、きっと宮田君は部屋替えで来て、本当に僕から解放されるんだ。
だから今は、嘘でも『部屋替えしたい』っていった方がいいんだって、僕の中にわずかに残った冷静な部分が叫んでる。
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