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「―――おいこら、止まれ」

―――ある日の昼休み。僕が廊下を歩いていると高圧的な声に呼びとめられた。

「あ、こんにちは風紀委員長様」

振り返ればそこにいたのは風紀委員長様で、僕は内心『うげっ』と思いつつもそれを表に出さずに笑顔で応対した。

「オマエまた試験一位だったな。カンニングでもしたのか?」
「ありがとうございます。カンニングなんて、そんな発想思いつきもしませんでした」

にっこり笑って毒を差し込んでやれば、風紀委員長は舌打ちする。

僕は、この人が苦手だ。俺様な雰囲気もそうだけれど、僕のことが嫌いらしい。

事あるごとに絡んでくるし、特に成績のことにはうるさい。万年二位に甘んじていることが許せないらしいが、何とも子供っぽい人なのだ。

「オマエのクラスマジで怖いな。オマエの風評流そうとしようものならすぐにクレームとして風紀に上がってくる」
「みんなが優しいからですよ」
「ハッ、その優しいクラスメイトとやらに寄生してうまいメシ食ってるのは誰だろうな、コバンザメ」

―――こ、…コバンザメ……っ!

声に出さずにいれた自分を褒めて欲しいくらいだ。

コバンザメって、サメとかにくっついてえさ貰ってるヤツのことか。確かに、委員長から見たら僕はそんな風に映るのかもしれないが、そういう風に言われるのは心外だった。

「片利共生、か。それでもクラスメイトはオマエのことが好きらしいからよっぽど猫かぶりがうまいんだろうな」
「―――生物の知識が豊富なんですね、委員長様は。次の試験では追い抜かれるかもしれませんから、僕もこれから図書館でもっと勉強してきますね。それでは」

暗に『もうテメエと話すことはねえんだよ』という意味を込めて一礼すると、そのまま歩いていこうとすると、委員長の声が僕を引きとめた。

「―――あーあ、なんでお前なんかに宮田付けたんだろうな」

宮田君の名前が出て、僕はゆっくり振り返る。嫌な汗が背中を伝ったが、いつも通りを心がけて委員長に微笑みかけた。

「……宮田君は、関係ないでしょう?」
「ある。オマエにつけなきゃもっといろいろ教えて時期風紀委員長に仕立て上げたのに。アイツがどれだけ有能か知らないだろう?」
「宮田君は、努力していらっしゃいますから。同室ですから、そのことは誰よりも知っていますよ」

宮田君は、自分が平凡なのを気にして、誰よりも頑張っている。

僕も遅くまで起きて勉強しているけれど、同じくらい、いや、それ以上宮田君は頑張っていた。風紀委員の仕事を終えてくたくたになって帰ってきても、部屋でも頑張っている姿を、僕は尊敬している。

そういう意味を込めて言うと、風紀委員長様が馬鹿にしたように笑った。

「―――はっ、麗しき同室者愛ってやつ?じゃあ、アイツが部屋に帰りたがらないの知らないだろ?」
「――――っ」





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