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珠樹はそういうと、俺を突き飛ばした。突然のことによろめきながら珠樹を見ると、涙を目一杯に浮かべながら、俺に向かってこういった。

「……僕ばっかり好きで、好きすぎて辛いよ……っ!」
「珠樹、」
「うわあああああああああああああん!!!!」

俺が何か言うよりも早く、珠樹は叫ぶように泣きじゃくりだした。迷子の子供のような、悲鳴に近い泣き声に、俺はたまらなくなる。

これが、珠樹の本音で。

俺が傷つけた分で。

「―――ごめん!」

気が付いたら、俺はもう一度珠樹を抱きしめていた。謝って済む問題ではないと分かっているのに、そんな陳腐な言葉しか浮かばない。

「ごめん、好きなんだ…っ!だから、ごめん、本当にごめん…」
「僕は嫌い!ほかの人のところに行っちゃう日高なんか嫌い!」
「―――嫌いでもいい!」

珠樹に負けないくらいの声で叫ぶと、珠樹は驚いたように目を丸くした。

「嫌いでもいい。信じてくれなくてもいいから、傍で見守らせてくれ!―――俺は、珠樹が笑ってくれてないと嫌なんだ!」

いいながら、また涙が溢れてくる。

どんだけ必死なんだよ、と自嘲する自分が居るが、構わなかった。俺も、きっと珠樹の前ではかっこつけたがって、自分の気持ちを伝えていなかったんだろう。

そんなの、うまくいかなくて当然だ。

でももう気づけたから。

―――お願いだから、俺にもう一度、チャンスをくれないか。

「……じゃあ、見守ってるだけでいいの?」
「う……」

泣いている俺にも、珠樹は辛辣だった。

確かに、傍にいるだけでいいかと言われれば、素直にうなずけないところがある。俺は未だに珠樹が好きで、あわよくば復縁したいと思っているから。

「復縁したいとか、そういうのは無いんだ?」
「――――あ、あります……」
「―――なんだよ、ウソツキ」

情けなくそう答えた俺に、珠樹は呆れたように笑った。

それにつられて珠樹を見れば、珠樹は、幾分すっきりした顔をしていた。

「許した訳じゃないから。でも、僕もいいたいこと言わなかったの悪かったって思う。だから、また隣にいてよ」
「珠樹……」
「調子乗らないでね、また友達からだから」





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