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―――それから、俺は珠樹に連絡を取らなかった。

珠樹には、俺が居ない方がいい。そう痛感した今回の事件は、俺にも結構堪えた。

当たり前みたいにキッチンに行っても、珠樹が『おはよう』と返してくれることはない。面白かった本の感想を話す相手も、もういない。

そこらじゅうに珠樹の存在が残っていて、胸が締め付けられるようだった。馬鹿な自分は、空気のように大切な存在を自分から手放した。

その戒めだと自分を納得させたが、どうにも気分が収まらなくて。

気分転換に映画でも見ようと、近くのレンタルビデオ店に向かった。そこで、俺は目を丸くする。

店の奥の奥。男なら覗かずにはいられないアダルトビデオが陳列されている場所に、珠樹が居た。

いや、正確には珠樹の出たアダルトビデオがあった。

表紙にはモザイクがかけられているが、俺が珠樹を間違えたりする訳がない。何度も抱いた身体をほかの男の手が這いまわっている写真に、おぞけがした。

俺は、なんということを珠樹に要求したのだろう。

そう思いながらも、手は意思を無視してDVDを手に取る。怖いもの見たさに似た感覚だろうか、ぶるぶると震える指先でDVDを掴んだまま、俺はそれを結局レンタルしてしまった。

帰ると、それをパソコンにぶち込んで、中身を見た。

モザイクのとれた顔は、まぎれもなく珠樹だ。妖艶に男を誘いながら、たくさんの男に身体を撫でられ、切なく悶えて行く。

『……気持ちよさそう』
『そんなわけ、ない』

嫌そうに身体をよじっていく姿に、なぜか少し安心する。珠樹も嫌で仕方なく出ただけで、本心では出たくなかったのだと確認したかったのかもしれない。

散々ひどいことをしておいて、心は俺に向いていたのだと、ずるくも安心したかったのかもしれない。

悪者は俺だと、再確認するだけなのに。

『あ、ああ、ひっ――――』

だけど、だんだん珠樹が切なく啼いて。

『もっと、見て……っ』

自分で足を広げて見せたところで、俺の中で何かが焼き切れた。

それと同時に、視界が鈍く曇る。

「―――チクショ……っ」





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