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※僕の選んだ道続編
彼氏エンド、エロなし
―――嫌な予感はしたんだ。
冷静になって、自分の口にしたことを思い出して。そうして、慌てて家に走った。
そうしてみれば、予想通り。
―――珠樹は静かに、俺の前から消えた。
―――好きだ、と言ったのは珠樹が先だった。
高校時代、何となく仲良くなった珠樹にカミングアウトされて、そして俺が好きだと言われた。
最初はそりゃ悩んだ。俺は女が好きだし、珠樹もそんな俺に向かって『本当に女の子好きだよね』って呆れたように笑っていたのに。
そんな珠樹から、告白されて。
俺はきっぱりふってしまうのが正しいと思った。期待にはこたえられないし、珠樹との友情なら、一度気まずくなったところでまた修復できる自信があった。
それでも、気が付いたら俺は珠樹と付き合うことになっていて。
一時の間違いとかじゃなかった。珠樹は何もしてこなかった。だけど、朝起きれば珠樹は俺の腕の中にいて。
―――その安らかな寝顔を見て、素直に『好きだな』と思った。
一番の問題だったセックスすらも難なく出来て、きっと告白で変わってしまったのは俺の方だ。俺が、珠樹によって、珠樹を好きな人間に作り替えられた。
だから『付き合おう』は俺が言った。そうしたら珠樹は、俺の腕の中で涙が枯れるほど泣いて。
純粋に、幸せだった。
―――そう、幸せだったのに。
俺たちのすれ違いは、あっさりと生じた。
最初は些細なことだった。
俺は女が好きなことに変わりはないし、一番は珠樹だとしても女友達はたくさんいる。
遊びに誘われればついていったし、そのまま泊っていくことも結構あった。
だけど、それをほかの友人から注意されて。
『―――オマエ、そんなホイホイ遊んで行って、本命が泣くぞ?』
そう言われて、確かにな、と思った。俺はあまり束縛しない方だが、それでも珠樹がほかの男といるのを見るのは気分が悪かった。
だから、珠樹に謝ったんだ。
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