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うまそうな人、と言いかけて、俺は口をつぐむ。目の前にいる気の弱そうな大学生は、俺を見ると小さくほほ笑んだ。

焦げ茶の髪の毛に、少し垂れた目。手にはきのこ雑炊があって、俺を心配げにうかがっている。

「ちょっと熱があったんですが、大丈夫ですか?バイタルサインは正常でしたし、酔っ払っているようでしたので救急車は呼ばないでおきました」
「あぁ……」

俺は無意識に口元に手を当て、苦笑した。

気分が悪くなると、血液が欲しくなる。しかし、それがなかったので手近にあったワインを飲んだのだった。

血が飲めない間はワインを飲んでいると、それなりに安定する。近くのスーパーで買った一番安いワインだったが、軽傷ですんだのはそのおかげだろう。

「食べられそうだったら、どうぞ。僕が作ったんですが、変なものは入ってませんので」
「あー、親切に悪いけどな、俺、吸血鬼なんだよなー」
「え?」

雑炊を持っていた彼が、不思議そうに問いかけてくる。『言葉の通りだよ』と返すと、『そうですか』とそっけない返事が返ってきた。

「そうですかって…他に何かあるだろうが」
「そういうもんですかね?でも、僕恋人は選んでも友人は選びませんから」

あ、俺もう友人だったのか。

あまりにもあっさりと言われ、俺は少し呆れた。昔の童謡か何かであったが『一度あったら友達で毎日会ったら兄弟』ということらしい。

ちょっと抜けている様子の彼を観察していると、ふと彼が声を掛けてきた。

「じゃあ、きのこ雑炊もダメ?」
「食べれるが、回復はしない。やっぱり血液欲しいな」
「そっかぁ……」

俺がそういうと、彼はしばし考え込むように首をかしげた。

「輸血パック、勝手に持ってきたらお父さんに怒られちゃうし…っていうか、いれてくれないかな」
「なんの話だ?」
「あ、僕のお父さん外科医なんだ。隣の病院で院長してるの」
「へー」

それで輸血パック、ね。





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