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「せんせ…大好き……っ、ごめんね…っ」
最後まで優しい人だった。
もう学校で毎日のように会えなくなって、このままこの感情は消えて行ってしまうのかもしれない。
『そういえばこんな迷惑な生徒が居たな』って、いつか先生たちの笑い話になるのかもしれない。
でも、俺は誰にも言ったりしないだろうと思った。
大人になりたくて、もがいた末の情事。先生との秘め事は、今まで生きてきた中で一番幸せな瞬間だった。
誰にも知ってほしくないし、このことは先生を困らせるものでしかないのも知っている。
だから、言わない。
あの優しい瞳は、俺を抱きながらも優しかったのだと。
大きな手に包まれると、とても幸せな気持ちになれるのだと。
―――俺は、先生に恋をしているのだと。
「先生、さようなら…」
俺はもう、先生と会うこともないのかもしれない。
だけど、一つだけ願うなら。
―――どんなに厚かましくとも、嫌な奴だおもっていたとしても、俺を忘れないでいてください。
ほんの一ミリでもいいから、先生の心の中にいたい。
そう願わずには、いられないのです。
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