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俺にあげられるのはこの体しかないんだ。だから、お願い。

「俺でよかったら、いっぱい気持ちよくなって…」
「俺は、凛太郎君が気持ちいいとうれしいよ」
「じゃあ…頑張るから」

俺は小さく笑うと、先生の動きに合わせて腰を揺らし始めた。なんとか気持ちよくなれるように、自分で自分自身を握って扱く。

「んっ、せんせ、そこ、気持ちぃの…っ!」
「ここ?」
「んっ、そぅ…あっ、だめぇ……っ!」

足の指がピンと伸びて、急激な絶頂感にのまれてしまう。俺の手の中にある自身から白い液が溢れて、後ろをギュッとしめてしまう。

「う……っ」

先生のうめき声が上でして、中に温かいものが打ちつけられたことを感じる。俺と同じだけ先生も気持ち良かったのかな、と思うとまた後ろを締めてしまった。

「せんせい…ありがとう」

俺は整わない息でそういうと、ふっと意識を手放したのだった…。



「……せんせ?」

目を開けると、先生はいないようだった。真っ暗な部屋に1人きりで、身体は綺麗にされていたことが逆に情事の面影を失くし、あの行為が夢だったのではないかとさえ思えてくる。

―――結論から言うと、俺は大人になれなかった。

先生に、ずっと抱きしめていて欲しいと願ってしまったから。

『先生を守りたい』ではなく、『先生に抱きしめられたい』と願ってしまった。

だけど、俺は少し、大人になれたのだろうか。

―――俺は、この気持ちの正体に気づいたから。

「……先生が、大好き。すごく好き」

1人呟いて、なんと馬鹿なことをしたのかと涙が溢れた。

こんなに好きなのに。俺は先生を困らせることばかり。

先生にこんなことを頼んだのが、厚かましい願いだったのだ。それでも、先生は優しいから、俺の願いを叶えてくれた。





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