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「…ん、はぁ……っ」
「凛太郎君、無理しないでね。嫌だったら言って」
「やぁ…っ、やめたらいや……っ」
俺の胸にキスをする先生の頭を抱きしめると、甘えるような声を出した。
こんな声、ずっと出したことなんかない。
「せんせ、俺、汚くてごめんね…っ」
俺はうわごとのようにそうつぶやいた。
俺の身体、あざだらけでごめんね。こんな体を無理やり抱かせてごめんね。
でも、俺は早く大人になりたかったんだ。
『―――んだよっ!養ってもらってる身で文句言うんじゃねえっ!』
少しでも気に食わないと、お父さんはそう言って俺を殴った。それが当たり前すぎて、俺は大人しく受け入れていたのだけど。
『―――凛太郎君、大丈夫?痛くない?』
―――先生は、気づいて一番に湿布を貼ってくれた。
頭を撫でられ、体中の、俺も気づかなかったような背中の傷まで丁寧に薬をつけてくれて。
同じ大人の手なのに、触れ方は全然違って。
じんわり涙が滲むのを感じながら、お父さんみたいな触り方をみんなする訳ではないのだと思った。
『痛かったね。―――今度、凛太郎君のおうちにお邪魔していいかな?』
そう言って、先生はよく俺の家に来てくれるようになった。
お父さんはそういう時に限っていなくって。でも、先生は俺の話し相手になりながら辛抱強く待ってくれていた。
時々ご飯を作ってくれたりもした。
そのうち、俺は早く大人になりたいと願うようになった。
先生の傍にいたい。
養ってもらっているうちは子供かもしれないけど、早く大人になってお父さんに迷惑をかけないようになりたい。
大人になれば、もう殴られることもないよね?
もう―――俺は1人で生きていけるようになりたいんだ。
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