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「なぁ、オヤジ。あんたは俺に犯されてるの。これが現実なんだから―――俺を見てよ」
「ひっ――――」

ギュッと中心を握られ、俺はこわごわと目を開けた。

そうして、郁を見て、俺は何故か胸が苦しくなった。

―――この表情、覚えている…っ

泣きそうな、寂しそうな、でもそれを我慢している表情。俺を冷たく犯しているはずなのに、どうしてそんな目で見るんだ。

そう思うのに、そのまま中心を握られればはしたなく喘ぐことしかできず。俺は郁の動きに合わせて腰を動かしている現実に絶望しながら、助けを請うように郁の名前を呼んだ。

「あっ、もう、郁っ」
「もう限界?いいよ―――さっさといきなよ」
「あぁ!」

郁の一言で、俺はあっけなく果てた。その刺激で郁も果てたのか、中が暖かいもので満ちる。

その感覚を享受しながら、俺は意識が遠のいていくのを感じた。郁は俺の中から引き抜くと、また俺の身体を撫で始める。

「お願いだからさ―――」

そんな風に呟く郁の声が聞こえたが、俺は続きを聞くことができないままだった。




―――俺が郁と真面目に話したのは、きっと一回だけだ。

『よう、郁。また大きくなってんな』

帰ってきたら嫁の冷たい視線から逃げるように、郁の部屋へ向かう。毎日あっていたら絶対言わないような言葉を吐きつつ、俺は郁を嫁からの防御壁に使っていたのだ。

でも、郁が言葉を覚えたころには、離婚して離れ離れになって。

俺なんかに育ててもらうよりも、嫁の方が絶対しっかりしているし、俺に郁を育てるつもりなんてなかったから、未練はなかった。

『じゃあな、郁。元気でいろよ?』

離婚して、元嫁とともに部屋を出ていこうとする郁に、俺は一応父親らしいことを言ってみた。

すると、郁が泣きそうな顔になって、逆に困ったのを覚えている。

『…オマエ、やっぱ離婚は寂しいか?』

離婚の意味さえわかっていない子供に、そんなことを言う俺は馬鹿だと思う。でも、子供は時々びっくりするくらい賢く、そしてハッとさせるような一言を言うのだ。

『…ううん、寂しくないよ。だって、パパの家と、ママの家。ぼくが帰れる場所が二つになったんでしょ?だったら、寂しくないよ』

泣くのを我慢した、明らかな強がり。

だけど、皮肉にもそれが、最初で最後のまともな会話だった。

もう少しだけ、郁に優しくしてやればよかった。

そんな風に思いながらも、やっぱり俺は変われなかったのだ――――





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