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「まじかよ……っ」
昨日のことは夢ではなかった。いや、これからもきっと続いていくのだ。
この写真がある限り、俺は昨日のことを過去にできないのだ。
身体が覚えている。昨日の恐怖も、逆らえないという現実も。
もし従わず、神社に行かなかったらこの写真はどうなるのだろう。きっと、いろんなところに広められてしまうに違いない。
「消してもらうために、いかなくちゃ…」
口ではそう自分を奮い立たせるも、お願いして消してくれる確率はかなり低いだろう。それでも、行かないと俺は―――
拒否反応と理性のジレンマの中で、俺はギュッと頭を抱えた。
恐怖から逃げるように目を閉じて、震える自分を守るためのおまじないを頭の中で唱える。
―――大丈夫だから、きっと大丈夫だって。
「……はぁ」
俺は一つ息を吐くと、携帯をそっと閉じてベッドから立ち上がり、神社に向かうため着替え始めたのだった…。
「やぁ、セナ君」
神社の前で俺を呼び止めたのは、まだ若い男性だった。昨日は逆光で顔が見えなかったが、ずいぶん小奇麗な顔をした男性だと思った。
まだ20代後半だろうか、青年特有のさわやかさがある。白を基調とした服装がとてもまぶしく、昨日俺を蹂躙した人とは別人のように感じた。
「……どうも」
「会いたかったよ。日の下で見るとやっぱりかわいいね」
「っひ、」
――――間違いない、やっぱりあの変態だ。
なぜなら目の前の男性はそういったかと思うと、俺をおもむろに抱きしめたのだ。昨日さんざん抱きしめられたため、身体が相手を覚えている。
相手の背格好も、背中に回る手の大きさもすべて昨日の変態のものだった。
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