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「―――それで、一晩中語り明かしたの?」
「うん。それで今日部活に行く途中、勇介に『寝不足じゃねえか』ってブツブツ言われた」
「ふふ、良かったね」

――――その次の晩。俺は円さんと会っていた。

約束通りとびきり手の込んだグラタン(ネットで調べたのだろうかプロ級の出来だった)を食べさせてもらって、今は海を見に来ている。

ひとしきり海岸線の散歩を楽しんで、今は防波堤の上に並んで座って海を眺めていた。

あまり人通りが多くないのか、さざ波の音とたまに通る車の音のみで、とても静かな空間だった。

―――まるで円さんと世界に二人だけみたい、なんて。

意識するととても恥ずかしかったけど、ドキドキとうるさい心臓も心地いい。俺は円さんの肩にもたれるようにすると、『円さんのおかげだよ』と笑った。

「俺は何もしてないよ。―――向き合ったのは、セナ君が頑張ったからだよ」
「ううん、俺だけだったら向き合えなかった。円さんが背中を押してくれたからだよ」

先ほどから何度もこのやり取りを繰り返しては、恥ずかしくて笑ってしまうの繰り返し。

円さんは俺の頭を何度も撫でて褒めてくれるから、そのたびに気持ちが溢れそうになる。

「大好きなセナ君の力になれたなら本当に良かった。俺も嬉しいよ」

好きだ、とまた言われて、俺の気持ちはかき乱される。溢れそうになっているのを必死でこらえているところにさざ波を立てられ、俺の気持ちが溢れ始めた。

「……円さんさ、気持ち伝えてくれるのに、俺の気持ちを聞くのには臆病だよね」
「え?」
「俺が、どうして円さんに会いたいって思ったか、どうして肩にもたれてるかとか、聞かなくていいの?」

本当は気づいているくせに。

暗にそういう意味を込めて円さんを見上げると、円さんは顔を赤くして『…まいったな』と呟いた。

「だって、俺の勘違いだったら恥ずかしいじゃないか」
「今まで俺散々恥ずかしいこと円さんにされたんだけど?―――お互いの間に、隠し事はいらないんでしょ?」
「そうだけど…セナ君の可愛い口から聞きたい、って気持ちがあって」
「じゃあ、ちゃんと聞いててね」

俺はそこでいったん区切ると、円さんの手をギュッと握りしめた。すぐに指を絡めてくれる円さんの気持ちを信じて、俺は円さんを見上げる。

「―――円さん、すごく好き。大好き」
「セナ君…」
「ははっ、やっぱり恥ずかしいね」





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