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円さんは俺を元気づけるかのように頭を撫でてから車を発進させた。

俺は車が角を曲がって見えなくなるまでそれを見送った後、自分の家に向かって歩き始める。

「―――セナ!」

俺の家の前に来たところで、真下に呼びとめられる。俺は真下が玄関の前にいたことが驚きで目を丸くした。

「真下……待っててくれたの?」
「当たり前だろ…心配かけんな、馬鹿」

真下は俺を確認すると、泣きそうな顔になって俺を抱きしめる。

―――あぁ、やっぱり俺が馬鹿だった。

「勇介…ごめん……っ」

俺はぶわっと出てきた涙をぬぐえないまま、真下―――勇介にギュッと抱きつく。

どうして、目を背けてしまっていたのだろう。こんなに大事に思ってくれていたのに。

家族って言ってくれる言葉に、嘘いつわりなんか無かったのに。

「あらあら、勇介…とセナ君!良かったわぁ心配してたのよ?」
「おばさん……」

勇介の家からおばさんが出てきて、俺の姿を見つけると一目散に歩み寄ってきた。

「もう、泣いちゃって仕方のない子たちね。―――そこじゃ寒いでしょう?上がりなさいな」

泣いてたことを指摘されて、バツが悪そうに勇介が顔を背ける。俺はクスリと笑ってからおばさんに笑いかけた。

「はい、すみませんお邪魔します」
「遠慮しないで!私たちとセナ君の仲じゃない!…あ、お雑煮食べましょうよ」
「作りすぎただけだろ。残り物セナに食わせるなよ」
「勇介うるさいわよ」
「あははっ」

気持ちの違いだけで、こんなに前向きになれるのか。

俺は勇介とおばさんのやり取りを見守りながらしみじみそう思った。

目をそむけずまっすぐ受け止めれば、こんなに優しい空間。

愛情も温もりも勇介のモノを分けてもらっているだけなんてことはない。―――ちゃんと、俺のためのモノもあった。

本当のお母さんにしかもらえないモノがあるかもしれない。お母さんにしかできないことがあるかもしれない。

でも―――それが貰えないからといって、他のモノをないがしろにする必要はないのだ。

この温もりも愛情も―――勇介たちにしかもらえないかけがえのないモノなのだから。

俺は家に入っていく勇介とおばさんを眺めながら幸せな気持ちでついていった。先を進む勇介の服を掴むと、そっと問いかける。

「勇介、今日泊まっていい?」
「ん?あぁ」
「話したいことがたくさんあるんだ―――聞いてくれる?」





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