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誰ともまっすぐ向き合えなくなってしまったから、素直に愛情が受け取れない。

真下は俺を心配しているだけだと分かっているのに、卑屈に理由をこねまわしていたのは―――俺自身。

「……お、れ、馬鹿だ…っ」
「馬鹿じゃないよ。純粋なだけ」
「……うっ、く、」
「いいよ、いっぱい泣いて」

こらえきれなくなった涙が溢れて来て、言葉にできない。

そんな俺を、円さんは優しく抱きしめてくれる。

円さんにあってから、俺は自分をおさえられない。眠い時に寝て、泣きたいときにいっぱい泣いて。

素直じゃないこともたくさんあったけど、それすらもいつかは笑いに変わって。

そんな俺を、円さんは全部見守っていてくれる。

円さんと出会えてよかった。円さんと出会えなかったら、俺はきっと逃げてしまったままだった。

最初は嫌でしょうがなかったけど、今は心の底からそう思えるんだ―――

「……さぁ、おうちに帰ろう」

ひとしきり泣いてしまうと、円さんはそう言って俺の背中を叩いた。

「もし向き合って上手くいっても傷ついても、俺を必要とするならいつでもおいで。その時に、とびきりおいしいグラタンを用意して、海に連れて行ってあげる」
「――――うん」

もう、涙は出なかった。真下に早くあって、謝りたかった。

「ふふ、もう俺の好きなセナ君だね」
「そりゃどうも。…円さん、手つないでていい?元気出るように」
「もちろん、役得だね」

円さんはそう言って、俺の手をとってくれる。

そして、俺を車に乗せて運転している間も、ずっと手をつないでいてくれた。

「じゃあね、セナ君」
「ありがとう円さん…明日、会いに行ってもいい?」
「もう写真は無いよ?」
「無くても―――円さんに会いたい」
「分かった。頑張れ」





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