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「どうした?セナ」
「え…あ、うん大丈夫…」

そんなときに真下に顔を覗き込まれて、俺は作り笑いでごまかした。男が痴漢されているともいえない、という何とも下らないプライドだったが、それ以上に真下と佐伯さんの仲の邪魔をしたくなかった。

―――大丈夫、コートの上から触られてるだけだし実害ない…体育の柔軟の方がべたべた触られてるさ…

そうやって自分をごまかしていたが、痴漢の手はどんどん大胆になっていく。手の大きさからして男性だろうか、背中や太もも、厭らしい動きが俺を翻弄する。

「っ、ぁ」

コートの隙間を縫って男の手が侵入してきたとき、俺は思わず小さな悲鳴を上げた。隣にいる二人に気づかれないように必死だったのだが、幸いにも二人には届かないくらいの嬌声だった。

――――あ、ぁ…嘘だ…っ!

コートの下に入ってくるとダイレクトに男の手を感じる。ケツを揉みしだかれるような動きといやでも周囲に感じる人の体温に変な気分になってくる。

……本当、誰なんだよ…っ!

手を払いのけるような動きをしても、また懲りずに手が伸びてくる。しかも人ごみの中であまり身動きが取れないため、そんなわずかな抵抗もあっさりと制されてしまった。

「……んっ、くぅ…」

自分の手で口元を抑えて嬌声を防ぐ。男は後ろから両手を伸ばし俺の胸元と俺の息子を揉んでいた。間接的な刺激だが、性感帯を刺激されてどうしようもなくなってくる。

……やだ、逃げたい…気持ち悪い……っ!!

そんな必死な気持ちで、俺は隣にいた真下のコートをつかむ。真下は俺の方を向いて驚いたようにした。

「―――セナ?大丈夫か?」
「本当だ!顔赤いよ?」

異変を感じた佐伯さんも心配そうに俺を覗き込んでくる。その間痴漢の手は動きを止めていたが、俺は息も絶え絶えだった。

「うん…っ、なんか、あんまり、気分良くないから抜けようかなと思うんだけど」
「え?大丈夫なの!?」
「じゃあ俺も付き添う」
「馬鹿か!佐伯さん一人にすんなよ!…俺一人でも大丈夫だから、二人で楽しんでこいよ」
「セナ……」






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