3




『―――おい、オマエ今どこだよ』

もしもし、よりも早く真下の不機嫌そうな声が聞こえてくる。

「……メールしなかったか?今親戚のおじさんの家にいるんだよ。今晩帰るから」
『見た。最初は納得したけど、よく考えたらおかしいよな。セナと一緒にいてそういう親戚にあったことないんだけど』

円さんとの出会いは説明できなかったので、そう嘘をついていたのだが、真下は納得していないようだった。

俺は内心円さんのことがバレやしないかと冷や汗をかきながら、そっけなく言葉を返す。

「この前わざわざ会いに来てくれたんだよ。……俺の親戚を、いちいち真下に紹介しないといけないのか?」
『そうじゃない。俺はセナに何かあったんじゃないかと不安なんだ。脅されてそう言えとか脅迫されてるんじゃないか?』
「何もない。大丈夫だって」
『いや、今落ち込んでるだろ。声で分かる』

真下は鋭い。ずっと一緒にいて、俺のことを分かっている。

嘘はつけない、と思って素直な気持ちを口にした。

「お母さんがテレビに出てたから、そのせいだろ」
『あぁ、バカンス行くらしいな。……聞いてなかったのか?』
「…しらなかった」

ダメだ、単純な質問なのに、流せない。

真下の言葉が心に引っかかって、俺はぐっと胸のあたりの服を掴むことで叫びだしたいような衝動をこらえた。

『なら、ますます早く帰ってこい』
「どうして?」
『セナが心配なんだ』
「…大丈夫だってば。信用してよ」
『信用してる。ただ―――オマエは俺の家族だ。自分の家族を心配して何が悪い?』

あ、まただ。また、引っかかる。

優しい言葉なのに、引っかかって、俺の心を引き裂いていく。

「違う!―――俺は、真下の家族じゃない!」

心の痛みに耐えきれなくて、俺はそう叫んで電話を切った。

すぐに電話がかかってくるが、それも電源を切ることで取らなかった。静かになった携帯を、俺は震える手でそっとテーブルに置いた。





[ 31/37 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]


top


「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -