7
炊き立てご飯にほっこり温まる味噌汁、鯖の塩焼き、ほうれんそうのお浸しという何とも幸せな朝食を食べた後、俺たちはリビングでまったりしていた。
1日をくれ、と言われたのでてっきり出かけると思っていたのだが、円さんは無理に出かけようとはしなかった。
「セナ君眠い?」
「うん」
「じゃあお昼寝しようか」
俺がご飯を食べながらうつらうつらしていると円さんはそう言って、食器を片づけてリビングのソファーに俺を寝かせてくれた。
「セナ君こっちね」
「膝枕……?」
「そう。それくらいさせて?」
むしろ俺がお願いする方じゃないのか、と思うが円さんは嬉々として俺を呼ぶ。
膝をぽんぽんと叩かれ、拒否することもできないまま、俺は『お邪魔します』と呟いて膝枕に甘える。
すると毛布を上からかけてくれて、円さんを見上げるといつもの嬉しそうな笑顔を浮かべていた。
「はぁ、幸せ」
「重くない?」
「全然!むしろセナ君の匂いとか体温とかご褒美…っ!」
「変態」
「ふふ、ごめんね」
全く悪びれる様子もなく、円さんは俺の髪の毛をさらさらと梳いて遊び始める。
「……ん」
膝枕をされ、髪の毛を梳かれながら優しいリズムで背中を叩かれると嫌でも睡魔が襲ってくる。
円さんが用意してくれた毛布をもぞもぞと引き寄せながらまどろんでいると、円さんがぽつりとつぶやいた。
「…初めてだなぁ、こんなに誰かと一緒にいるの」
「…………」
うん、俺もだよ。
こんなに家の中で誰かの空気を感じて、手の届く距離で体温を感じることなんてなかった。
目が合えば優しく微笑み返してくれたり、大きな手で頭を撫でてくれることもなかった。
円さんもこんな気持ちを抱えていたのだろうか、そんな風に思いながら1人で住むには広いこの部屋を思った。
「円さん、誰かと一緒に住んだりしないの?」
「できないよ、俺は結局引かれて終わりさ」
「あー…でも、同じタイプの人とか…」
「それでも長続きしない。べたべたに愛して、どんなことでも知りたいって気持ちは重いんだって」
「…そんなことないと思う」
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