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俺は円さんの前にしゃがみこんで問いかけた。すると、円さんはとびきりの笑顔で頷いてくれる。

「そっか」

俺はその時初めて、円さんに笑い返した。


もっと、円さんを知りたい―――


俺にももっと、いろんな顔を見せて。

円さんみたいに自信を持って言えないけど、きっとどんな姿でも見せてくれたら嬉しいはず。

「名字読めなかったんだよね。なんていうの?」
「あぁ、珍しいよね。ツワブキっていうんだ。でもセナ君には名前で呼んで欲しいなぁ」
「いいよ」
「やった!」
「あ、やっぱりどうしようかな」
「セナ君〜」
「もう!包丁使ってるんだから危ない!」
「はい、ごめんなさい」

情けない声をあげながら、円さんが抱きついてくる。

俺はそれを冷たくあしらいながら、昨日よりもはっきりと『幸せ』を感じていた。

―――胸に確かにあるそれは、膨らみ続けて俺を満たしていくんだ。

その感情の温かさを知ってしまったから、俺は向き合って育てていくだけ。

もし、出会いも笑い飛ばせるくらい大きく育ったら―――溢れんばかりの気持ちを円さんに伝えたいな。

「野菜切れたよ」
「本当?ありがとうセナ君天才!」
「調子いいこと言ってんじゃねえよ」
「うっ」

そんなこんなで、朝ご飯をつくる間は会話が絶えず、暖かい時間を過ごしていたのだった―――





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