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そんな風にぼんやりしていると、変態が隣に座って真面目な顔をする。

変態のそういう顔は珍しくて、俺は小さく頷くことしかできなかった。

「この前のデータは消すよ。たくさん怖い思いさせてごめんね」
「あ……うん」

データを消してもらえる、と聞いて、俺は嬉しい気持ちの他に胸に何かチクリとするものを感じる。

―――どうしてだよ、それを目当てにここまで来たんだからいいことじゃないか。

「だけどね、最後にお願い。―――今日一日だけ、一緒にいてくれない?もうセナ君が嫌なら抱いたりしない、本当に傍にいてくれるだけでいいんだ」

俺が自分を叱咤している間に、変態は俺の手をとって懇願する。

「いろんな人がセナ君を心配してると思う。明日にはセナ君は普段の生活に戻れるんだ。だけど、あと一日だけ、俺にセナ君の時間をください」

変態は、馬鹿だと思う。今までみたいに無理矢理いうことを聞かせることもできるのに、いい大人が年下の高校生にこんなに必死で懇願して。

「―――いいよ、心配しそうな人には俺から連絡しとく」
「っ」

本当に、馬鹿だ。

俺なんかにそんな価値は無いのに、それでも俺と一緒にいたいなんて。

「……ありがとう」

それでも、パッと明るい顔をして微笑んだ変態を見て、まぁ悪くないかな、なんて思ってしまう。

「じゃあご飯にしようか。もし薬盛られるのが不安だったら一緒に料理しようか」
「うん、じゃあそうする」

別に変態が薬を盛るなんて思っていなかったが、1人でぽつんと待つのも嫌だってので頷いておいた。

「俺あんまり料理した事ないよ?」
「いいよ、一緒にいれればそれだけで楽しいし。セナ君は和食と洋食どっちが好き?」
「和食」
「了解」

変態はそういうと、俺をエスコートしてキッチンに連れて行ってくれる。腰が辛い俺を庇うように、隣に立ってくれてまた何かが満たされるようだ。

「セナ君、好き嫌いある?」
「ない」
「へぇ、えらいね。じゃあ野菜いっぱいいれて味噌汁作ろうかな。切ってくれる?」
「うん」





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