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―――おいおいおい……

クラスの情景に、俺は目を疑った。

数人が友人にお願いするなら分かる。だけど―――量がはんぱじゃない。

そんなに1人で持てないだろう、ということは誰も考えないのだろうか。戸惑うように隣にいた栗林を見た。

「―――どうした、藤川?」

―――わざとか。

妖艶な笑みを浮かべる栗林を見て、俺は確信した。

どうしてこういうことをするのだろう。これがクラスの当たり前なのか。

分からないなりにも分かることは、見慣れない光景に目を丸くしている俺がどういう行動を取るかを、栗林は見ている。

「――俺も行きたい」

俺は栗林から視線をそらし、ため息をついてから翼にそう声をかけた。いきなりの俺の申し出に、翼は驚いたように目を丸くした。

「弁当は?」
「慣れない環境で予想外に疲れて腹が減った。放課後まで空腹にならない自信がないから適当に買ってくる」
「なら翼に頼めばいいのにー」
「来たばかりなんだ。学食の場所くらい覚えときたい。……連れてってくれないか?」

わざとらしく質問を投げかけてくる栗林に適当に返しながら、最後は確認を取るように翼に声をかける。

「あぁ…うん、いいよ」

あっけにとられたようにしていたが、翼は我に返ったように頷いてくれた。

「じゃ、行こうか」

翼はそういうと、扉を開けて俺を案内してくれる。リノリウムの廊下を歩きながら、俺は口を開いた。

「悪い、名字が分からない」
「え?」
「……翼、といきなり呼ぶのはすごく失礼な気がしたから、名前が聞きたい」
「あぁ、そういうこと」

きょとん、としたかと思ったら翼はおかしそうに笑ってくれた。笑うと頼りない印象が優しい印象に変わってとても好感のもてる笑顔だった。





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