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「残念。転校生って『隣の子から教科書見せてもらって仲良くなる』みたいなのが定番なのにな」
「そんなクラスメイトに迷惑かけられないだろう。夏休みから編入が決まってたから、先生に言って用意してもらっただけだ」
「へー」
「…………」
「あ、ワリい。俺さ、栗林篠(くりばやししの)。よろしく」

俺が言葉に詰まっていると、相手―――栗林は俺の困惑を悟ったかのようにそう言ってきた。

「よろしく」

俺はそれだけ返すと、小さく頭を下げる。

それに対して、栗林はちょっと頬をあげて笑った。

「藤川って、大人しいのか?それとも緊張してる?」
「俺はいつもこんな感じだ」
「へー、せっかく美人なんだからもっと喋ればいいのに」
「余計な御世話だ」

俺はそれだけ言うと、黒板に向き直った。まだチャイムが鳴っていないというのに先生がすでに来ていて、何事かを黒板に書き込んでいる。

こういう先生の気合が違うのだろうか、と妙に感心しながら見ていると、隣から視線を感じて、俺は栗林を見遣った。

「ま、ぼちぼち慣れて行こうぜ、藤川」

栗林はそれだけ言うと、黒板に向き直ってしまう。

俺はそれをため息をついて見守ると、同じく黒板の板書を開始した。

―――順調とは言えないスタートだったが、なんとかこの学校でやっていけそうだと思った矢先。

現実は、そう甘くなかった。





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