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―――いびつを正したい、そう思っていた。

だけど、いびつを正して、その先に何が見えるのだろう?

その答えは、きっと翼にすら分からない。誰も知ることのない、未知の世界。

でも―――俺は、もっといいクラスになれると信じている。

信じているから―――前に進める。

寮を目指していたところで、俺は足を止める。

アイツは、俺を一番捕まえやすいところにいるだろうとは思っていた。

捕まえやすいところとは、俺が必ず通過しないといけないところ、つまり―――寮の目の前だ。

「……よ、無傷で生還とはすげーな」
「栗林…」

目の前にいる栗林は、俺に気づくとすぐにこちらへと歩み寄ってきた。

口元は弧を描きながらも、苛立ちが全身から伝わってくる。俺はそんな栗林を見つめると、自分からも歩み寄る。

「誰かに助けてもらった?職員室に泣きついた?どっちにしても―――もうおしまいだけどな」
「―――殴りたければ、殴ればいい」

自分の携帯を取り出し、クラスメイトに召集をかける栗林に、俺は短く告げる。

「オマエが、思い通りにいかないと、俺を殴ったとしても―――俺は、俺の心は、絶対折れたりしない」

屈してなるものか、そんな気持ちを込めて目の前の栗林を睨みつける。

心は決まった。―――あとは、自分の気持ちを、つたえていくだけだ。

「―――俺は、絶対、屈したりしないからな」

言葉を切るようにして、短く宣言する。

栗林は何も言わなかった。俺から視線をそらすこともせず、まっすぐに俺を見ている。

「――――はっ、上等だ」

そうして、意地悪く笑ったかと思うと、俺との距離をさらに詰めてくる。

もう距離がゼロになるんじゃないか―――そんな距離で、栗林に後ろ髪を掴まれた。

「――――っ、」

突然の痛みに、顔をしかめる。しかし、栗林は力を緩めることなく、そのままグイッと髪の毛を引っ張った。

そのせいで、自然と栗林を見上げる形になる。

「―――その勝負、受けてやるよ」

その時の栗林は、どの笑顔よりも凶悪で―――少しだけ、嬉しそうだった。

驚きに目を見張っていると、すぐに髪の毛から手を離され、よろめいたところに腹に蹴りをくらう。

そのまま砂利の上に倒れると、さらに栗林の蹴りが飛んできた。

「卒業まで、藤川の茶番に付き合ってやるよ。『やっぱり俺の自己満足でした』、って気づいたらすぐに言えよ?じゃないと―――加減、間違えるかもしれないからな?」

暗に、リンチの先にある生命の危機を示され、俺は嫌悪から栗林を睨みつけた。しかし、すぐさま別の場所から蹴りが飛んできて、俺は驚く。

「―――わり、おくれた」
「本当だよ、連絡は全員みてるだろ?」
「あぁ、もうすぐ全員つくはずだ」

そんな第三者と栗林の会話を聞き、他の奴らも集まっていることを理解した。

「―――さ、仕切り直しだ。人が来ないところに連れて行こうぜ」

俺を囲むようにして、声が増えて行く。

栗林の声を聞いた後、俺は確かな思いを胸に目を閉じたのだった……





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