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「…クラスメイト以外の言葉なんて、信じられない」
「それを言われると耳が痛いな」
まぁ、クラスの輪にも入れていない自分が言うのもアレなんだけどな、と思っていると、三間が腕の中でいたいところをついてきた。
「でも、三間が良い奴だっていうのは分かった。だから―――俺はそれに応えたいだけだ」
三間を腕の中から解放すると、小さく微笑みかける。すると、三間はとても驚いたようで、次から次から溢れていた涙がぴたりと止まった。
―――そういえば、三間の前で笑ったの、初めてか…。
俺がそんな風に考えていると、三間はキッと俺をにらみつけてきた。
「ちょっと顔がいいからって…そんな笑顔にだまされると思うなよ……っ」
「ん?」
「うるさい!もう知らないから!どっかいっちゃいなよ!」
急に顔を真っ赤にして怒りだした三間に戸惑っていると、三間はぐいぐいと俺の背中を押して寮の方角へ行かせようとする。
「三間…いいのか?」
俺が驚いて問いかけると、三間は小さく頷く。
「僕の身体能力の低さなんて、みんな知ってるよ。だから―――逃げられたってことにしてあげる」
「…ありがとう」
「勘違いしないでよ!僕は、藤川くんの言葉を信じたわけじゃないし、クラスメイトじゃないヤツの言葉なんか、これからも信用しないんだからね!」
「はいはい」
顔を真っ赤にして怒る三間に、俺は小さく苦笑する。ここは三間の気持ちに甘えることにして、俺は寮に向かって走り出した。
「じゃあ、助かった」
一応三間にそう声掛けをして、俺は再び足を速める。
「……藤川くん、ごめんね…」
―――だから、俺の背中に向かって三間がなんと呟いたかまでは、聞きとることができなかった。
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