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それでも、俺は努めて冷静に、問い返した。
「――――本当に、それでいいのか?」
「っ、」
「制裁におびえながら、1点の恐怖と戦う―――そうして、翼を殴ってストレスを発散して、それでいいのか?」
「――――っ!いいに決まってるじゃないか!」
三間は顔を真っ赤にすると、俺の胸倉をつかんだ。
「僕たちには、これしかないんだ!みんなで高めあって、志望校に受かるためには…っ、これがいいんだ!じゃないと―――っ、篠と、翼が、報われないだろ!」
「な――――っ」
三間は―――知っているんだ。このクラスのからくりを。
じゃないと、栗林はともかく、そこで翼の名前が出てくる訳がない。
栗林が引っ張り、翼が支える。そうして――――他の奴らが傷つくこともなく、守られているシステムだと、三間は気づいている。
「三間……知ってたのか…」
俺の呟きに、三間がびくりと反応する。そうして―――ぶわっと涙をあふれさせた。
「ぼくは…弱いから……っ、あの2人を信じて、ついていくことしかできない。どんなにツラいことがあっても、あの2人が言うならって思って来たんだ…っ」
三間の声の震えが大きくなり、かすれ、悲痛なものに変わっていく。そうして、俺の胸倉をつかんでいた手をおろすと、自分を抱きしめるようにしてぼろぼろと涙をこぼす。
「そうやって…自分を無理矢理納得させてきたんだ…っ、中途半端な気持ちなら、やめてくれ……っ!『ひょっとしたら、あの2人も救えるんじゃないか』なんて、変な期待をもたせないでくれ―――」
「三間……っ」
悲痛な叫びが、あまりも痛々しくて。
胸に刺さる悲鳴を受け止めながら、俺は三間をそっと抱きしめた。三間は一瞬身体を固くしたが、されるがままになっている。
「大丈夫だ。―――俺が、みんな救ってやる」
自信も、確証も根拠も無い。
でも、迷う心は消え去った。昨日迷っていたのが嘘のように、俺の心は決まったのだ。
俺がこの時期に転校してきたことに意味があるなら―――俺は、殴りあってでも、みんなの心を救う。
勉強と、ストレスばかりで。神経をすり減らし過ぎて逃げ道を確保することに必死だというのなら、俺が、向き合わせてやる。
向き合って、より強い絆を結んで。そうやって――――どんな困難にも立ち向かえるクラスにしてやる。
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