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――――栗林が『明日』、つまり今日を強調していた理由が分かった。

今日は定期的に行われていた『制裁』の日らしい。

2週間に1回、金曜日―――なんともしっかりと決められたルールだと呆れたが、そんな悠長なことを考えていられるほど、教室の雰囲気は良くなかった。

当然と言えば当然だが、全員廊下に掲示されていた成績を見たのだ。誰が一番で、どんな点数をとっていたかが知れ渡っているため、クラス中のフラストレーションは限界のようだった。

限界まで空気を入れられた風船のようだ、と自分の机に向かいながら考える。

これが放課後に破裂するのか、と思うと何とも言えない気分になった。

しかも、破裂したとしても飛び散らかるのではない。―――すべて俺に、収束する。

「おはよう、みんな」
「おー篠、はよー」
「はよっす」

ちょうど自分の席に着いたところで、栗林が教室にやってくる。

「……藤川も、おはよう」
「………あぁ」

隣の席のため、必然的に栗林が近づいてきて、俺にも挨拶をしてきた。普段は挨拶をされないので驚いて顔をあげたが、見なければ良かったと思った。

――――なんて凶悪な顔をしてるんだ…

笑っているのに、目が笑っていない。俺を殺す気かという位殺意のこもった視線を向けられ、俺はなんとか挨拶を返すので精一杯だった。

今日の放課後は大丈夫だろうか、と一抹の不安を抱えながらも授業は進んでいき、いつものように時が流れていく。

来なければいいと思っても、本当に残酷に時は過ぎ、ついに放課後になった。

HRを終えた先生が教室から出ていった瞬間、クラス中の殺気が強くなる。

「―――さぁ、みんな、今日は何の日だったっけ?」

そんな中、わざとらしく栗林がそう口に出す。みんなの心をまとめる能力に本当に長けているというか、クラス中の視線が栗林に集まった。

「本当は昨日の試験結果で最下位だった翼なんだけどな…うちには、クラスメイトじゃないやつがいるからなぁ」

栗林がそういった瞬間、みんなの視線が栗林から隣にいる俺にうつる。痛いくらいの視線を浴びながら息を殺して様子をうかがっていると、栗林が俺の机を蹴飛ばした。

激しい音を立てて倒れた自分の机を茫然と眺めていると、栗林が残酷に宣言する。

「―――ゲームスタートだ。クラスメイトじゃねえから逃げたって構わねえよ。ただ、捕まったら…分かってるよな?」





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