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「―――あ、今日実力考査の結果が出ているから後で確認するように」
そんな風にぼんやりしていると、ホームルームの時に担任がポツリと言った。ベテラン教師、といった風貌の担任は、眼鏡を押し上げるとクラス名簿をしまう。
「廊下に掲示してあるから塾に行く前にでも見ておきなさい。それでは、今日はここまで」
担任がそういったのを最後に、ホームルームは終わりざわざわと落ち着かない雰囲気が漂い始めた。
新学期の初めに行われた最初の試験。自分が制裁対象になることはもうないが、だからといって順位が悪くてもいいというわけでもない。
ピリピリとした雰囲気に包まれ、みんながみんなお互いの様子をうかがっているようでなかなか教室を出ていくやつはいない。
塾に行く予定もなく、すっかり疲れていた俺はそんな異様な空気の中で遠慮なく先に帰らせてもらうことにした。もちろん、途中に伸びてきた長い脚は華麗に避けて。
背中に突き刺さるような視線を感じながら廊下に出て、自分の順位を確認してみる。
得点と順位が、しっかり明記されているのは上位20位までのようだった。それ以下の人は掲載されていなかったが、平均点と最低点は書かれている。
平均点も最低点も、8割を超えている。さすがだなと思いながら俺は自分の名前を探した。
2学期実力考査 成績優良者 1位 藤川廉 498点
「―――さすが、超天才は違うな」
自分の名前を見つけたところで後ろから声がかけられる。振り返れば帰り支度を済ませた栗林が居て、俺はむっとしながらも応えた。
「才能も実力のうちだ」
「どーだか。カンニングでもしたんじゃねーの?」
「自分より賢い人間がいないのにどうしてカンニング出来るんだ。自分の頭を信じた結果だ」
「じゃー、先生に賄賂でも贈ったか?」
ガン、と激しい音を立てて俺の壁が殴られる。俺の返答に気分を害した栗林は明らかに不機嫌な様子だった。
「―――俺に八つ当たりしてるヒマがあったら勉強しろ。クラスメイトじゃない他人に裂く時間がもったいないだろう」
暗に帰らせろ、というと、ますます栗林の視線が鋭くなる。ぐいっと顎を掴まれて無理矢理栗林の方を向かされて俺は顔をしかめた。
「オマエはどうしてそう俺たちに喧嘩を売るかねー…。大人しく教室の隅で大人しくしとけばよかったのにな」
「うっ!」
その姿勢のままみぞおちに蹴りをいれられ、俺は小さくうめく。それにかまわず栗林は俺の身体にもう何発か蹴りをお見舞いしてきた。
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