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―――大丈夫、1人で生きていける。

俺の進む先は2人で通るには狭すぎて、1人を蹴落とすことでしか進めないのだから。

そしてその道を選んだのは、他でもない自分自身。



クラスメイトになれなかった俺は、『転校先で失敗した学生』になるのだろうな。

めちゃくちゃに落書きをされた机を見ながら思わず自嘲の笑みが漏れる。

あの日から一週間。毎日のように汚される机、無くなる私物。典型的ないじめに俺は笑うしかなかった。

暗黙のルールが適用されない俺にはダイレクトな悪意が向けられる。それを止めるモノはいないし、むしろ栗林を中心に積極的に推奨されているようだった。

悪意はすべて、俺に向かう。

それでも、俺も黙ってそれを受けているほどいい子ちゃんではない。

靴や私物は必ず自分で持って帰るようにしたし、机を綺麗にするために普段よりも早く学校に来て、油性ペンで書かれたそれを落とすようにしている。

足をひっかけられたこともない。足を目の前に出されてもすべて避けているから。

そうして、一言添えるのも忘れない。

「足が長いのは結構だが、自分の足ぐらいきちんと机の下にしまえないのか」

ぼそっとそいつだけに聞こえるように言う俺は、わざと制裁を煽っているのだろう。

それでも、俺は負けたくなかった。目には目を、ではないがやられっぱなしで我慢できるような性分ではないのでつい口が出てしまう。

そんな俺に対するイラつきが増すにつれて制裁も激化していき、リンチされる日も近いかもしれないと他人事のように考えていた。

こうして、教室の中での静かな攻防戦は続いた。

賢い奴らは隠すのにたけている。先生たちもこのクラスでこんなに静かに抗争が行われているとは気付かずに教室で授業をして出て行ってしまう。

今日もそうして授業が進んでいき、俺は息を吐いた。

すべての授業が終わり、後はホームルームだけである。『私語をしない』はホームルームにも適用されているようで、それはそれは滞りなく進んでいく。

俺はそれを耳半分で聞きながらクラスを見回した。

クラスメイトは一切俺に話しかけてこない。クラスメイトではない奴に話しかける必要はないということだろう。

翼も、俺には話しかけてこなかった。

あれから翼に対する制裁はなくなったようだったが、相変わらずあのへらへらした笑みでクラスメイト達とじゃれている。

殴られることはなくなったようだったが、あの頼りない雰囲気のせいだろう、今までと同じく低く扱われているようだった。

ただ、翼はあくまでも中立だった。

俺をあからさまに避けることもなく、制裁にも参加していないようだった。無言でお互いの攻防を見極めようとしているようで、ある意味一番読めないヤツかもしれない。





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