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手に取るように分かる、彼らの気持ち。

勉強をすれば、賢くなる。自分がいびつだということも、何でも知ってしまう。

いびつだと知っているから、隠すのがうまくなる。教師すら、親すら欺こうというのなら、内部から、俺が彼らを阻もう。

それが、俺たちには必要なんだ。

中途半端な時期に転校してきたのには意味があるのだと思う。今まで志の高さから学籍があかなかったのが災いして、誰もこのいびつさを指摘できなかったのだ。

誰も出来ないというのなら。

―――俺がしないで、誰ができる。

視聴覚室の情景を見ながら、そんなことを考えた。

同調するのは簡単だ、何も考えずに頷いていればいいのだから。

でも、考えなければ『個性』は始まらない。『1人として生きている証』は生まれない。他人と違うことをするのが『個性』じゃない、『自分で考える』ことが個性だ。

―――俺は、俺が『俺自身』であるために、簡単には屈したりしない。

そんな意思を込めて、じっとクラスメイト達を見返す。

翼も、栗林も。クラスメイトの誰も言葉を発しなかった。

ただ、栗林だけはしばらくじっと俺を見てから、冷めた目で笑った。

「―――なんとなーくだけどさ、オマエならそういいだす気がしてた」
「一週間の観察の結果か」
「鋭いよね、意外と。空気で察してるくせに、あえてそういう道を選ぶんだな」
「自分で納得いってない方が不愉快なんだよ」
「じゃあ―――クラスメイトにはなれなかったな」

栗林はそういうと、手近にあった机を蹴飛ばした。それはまっすぐ俺の方に倒れてきたが、すぐさま避けたためけたたましい音を立てて倒れ込む。

「―――オマエは、クラスメイトじゃない。だから、『みんなで仲良く』なんてルールいらないよな?」
「あぁ。そのかわり俺も好き勝手にさせてもらう」
「どうぞ。1人じゃ何も出来ないだろうけどな」
「役に立たない大勢連れているよりもマシだ」
「減らず口が」

栗林はそういうと、問答無用で足をふりあげた。迷わず俺のみぞおちにけりが決まって、俺は思わずうめきながら膝をつく。

「―――それは挨拶代わりだ。明日から楽しみだな、藤川?」

栗林はそういうと、もう俺に興味を失くしたかのように俺の横をすり抜けて視聴覚室を出て行く。他のクラスメイトたちもそれにつられたかのように教室からどんどん出て行き始めた。





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