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本当にうまい説明と言うのは、難しいことも簡単に説明できることだ。

先生の熱の入った教鞭は本当に分かりやすいし、簡単に聞こえるのだからここの先生のレベルの高さをうかがえた。

だけど、相手を見れば顔を真っ赤に染めていた。言わずと知れて、怒りで。

プライドを傷つけてしまったか、と内心焦っていても思うように言葉が出てこない。気まずい沈黙が支配する中、別の人の声が響いた。

「―――上野、優しいのは分かるけど、藤川は賢いから大丈夫だって」

そういうと、彼―――栗林はにっこり笑った。無邪気なその笑みに、上野というクラスメイトは慌てたようだった。

「そうか、そうだよな。わりい、藤川。忘れてくれ」
「……あ、あぁ」

驚くほどの変わり身の早さで上野はそういうと、何事もなかったかのように自分の席に戻ってしまう。

思わず栗林を見れば、いつものあの意味深な笑顔で微笑んでいるだけだった。

そうしてはっきりとした上下関係を見せられるとともに、俺は悟った。

『―――お互いライバルで友人という関係は、実はとても不安定だ。関係に小石でも投げ込まれるようならば、すぐにライバル心は嫉妬や憎悪に変わる』

―――俺は、その『小石』になるのではないかと疑われているのだ。

だから、未だにこのクラスのトップである栗林しか俺に話しかけてこず、みんな探るように俺を見てくる。

上野をフォローしたのではなく、あれはやんわりとした牽制。

まだ刺激をするな、見極めてからにしろという。

そこまで分かっていながらも、俺は大人しく星麗になじむことが出来ないでいた。

そう、翼関係だ。

翼は相変わらずみんなのパシリで、このクラスの中で一番下に扱われている。学食に行く弁当係はいつもアイツだし、教師からの雑用はすべてアイツが引き受けていた。

それを当然のように受け止めて、クラスメイトと笑いあうような神経を俺は持ち合わせていなかった。

翼に『俺のおせっかいは迷惑だ』と言われていないというのを逆手にとって、トイレに行く振りなどをして一緒に学食に行ったりしている。

翼はそんな俺を困ったようにたしなめるが、けっして『邪魔だからもう来るな』とは言わなかった。

だから俺は、同じように手伝い続けている。

それを栗林がおもしろくなさそうに見つめていても、クラスメイトが困惑しながらそんな俺たちの関係を眺めていても。

納得しないうちは、俺は簡単に折れたりしない。ただそれだけだ。





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